派遣先で大きなミスが出たあとに残るのは、気をつけましょうという一般論では解けない疑問です。
このミスで契約は切れるのか。切れるとしたら、誰が決めるのか。その間の賃金や休業の扱いはどうなるのか。損害を弁償しろと言われることはあるのか。この記事では、この4つを条文で確認します。
先に押さえておきたいのは、「クビ」という一言の中に、性質の違う3つの出来事が混ざっているということです。派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除されること。派遣元との雇用契約を期間の途中で解雇されること。有期の雇用契約が満了して更新されないこと。この3つは、決める相手も、根拠になる条文も、確認すべき書類も違います。
先に結論
- 通常の適法な派遣では、雇用契約の相手は派遣元で、派遣先は指揮命令を行う立場(派遣法2条1号)。雇用契約を終了させる主体は派遣元です。
- 派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除されても、それだけで派遣元との雇用契約が当然に終わるわけではありません。その後どうなるかは、解除の理由と契約の内容によります。
- 派遣法29条の2は「派遣先の都合」による解除に伴う措置の規定です。解除の理由が何と説明されているかで、当てはまるかが変わります。
- 解雇そのものが有効かどうか(実体)と、予告の手続き(手続)は、別々に判断されます。有効性は労契法17条(有期の期間途中)と労契法16条(解雇権濫用法理)、予告と解雇予告手当は労基法20条、その適用除外は21条です。
- 期間満了で更新されない場合は、労契法19条の要件と、労働者側からの申込みが関係します。自動的に更新されるわけではありません。
- 賠償額や違約金をあらかじめ決めておく契約は禁止(労基法16条)。賃金は全額払いが原則で、使用者に損害賠償請求権があっても賃金との一方的な相殺は原則として禁止されています(労基法24条)。
- 休業手当(労基法26条)は、派遣元に「使用者の責に帰すべき事由」があるかを個別に見ます。自動的に支払われるとは限りません。
- 収入源を分けることは、契約終了時の備えとして自分で検討できる部分です。
まず「誰と誰の契約か」を分ける
言葉を正確にするところから始めます。労働者派遣とは何かを、法律はこう定義しています。
労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
労働者派遣法 第2条第1号(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。通常の適法な派遣では、雇用関係は派遣元との間にあり、派遣先が持っているのは指揮命令の権限です。だから、雇用契約を終了させる主体は派遣元になります。派遣先ができるのは、派遣元との間で結んでいる労働者派遣契約を解除することです。
この条文から言えないこと。派遣先から何を言われても法的に無意味だ、という話ではありません。派遣先が派遣契約を解除すれば、その就業先での仕事は実際に終わります。また、契約の形と実態が食い違っている働き方もあり、そこは条文の定義だけでは判断できません。この記事は、書面どおりの労働者派遣を前提に整理しています。
呼び方の上では、どれも同じ「クビ」でひとくくりにされます。ただ、手続きが違うと、連絡する相手も、確認する書類も、受け取れる可能性があるものも変わります。
3つは全部違う:派遣契約の解除、期間途中の解雇、期間満了の雇止め
| 何が起きたか | 誰と誰の契約か | 主な根拠 | 雇用契約への影響 |
|---|---|---|---|
| 労働者派遣契約の解除 | 派遣先と派遣元 | 派遣契約の内容、派遣法29条の2(派遣先の都合による場合) | その就業先が終わる。派遣元との雇用契約は、それだけでは当然には終わらない |
| 期間の途中での解雇 | 派遣元(雇用主)と私 | 有効性(実体)は労契法17条(有期)・労契法16条。予告と解雇予告手当(手続)は労基法20条、その適用除外は21条 | 雇用契約を終了させる意思表示。有効性と、予告手続きが守られたかどうかは、別々に判断される |
| 期間満了で更新されない(雇止め) | 派遣元(雇用主)と私 | 雇用契約書の期間・更新条項、労契法19条 | 期間満了で終了する。19条の要件と労働者の申込みがあれば別途判断される |
自分の身に起きているのがどれなのかは、まず「誰から何を告げられたか」から見当をつけます。「派遣先が契約を切ると言っている」のか、「派遣元から解雇すると言われた」のか、「今回の期間で終了と言われた」のか。ただし、これは出発点にすぎません。最終的にどれに当たるかは、労働者派遣契約と雇用契約の内容、通知の文面、そして実際の取扱いを合わせて確認しないと決まりません。口頭の言い方だけで決めつけると、確認する相手も条文も変わってしまいます。
ケース1:派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除される
派遣先が派遣元に対して、その派遣労働者の受入れを終了したいと伝える形です。これは派遣先と派遣元の間の契約の話で、私と派遣元の雇用契約とは別の契約です。
派遣法には、派遣先の都合で解除する場合の規定があります。
労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。
労働者派遣法 第29条の2(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。「その者の都合による」解除、つまり派遣先側の事情による解除の場合、派遣先には、新たな就業機会の確保や、休業手当等の費用の負担といった措置が求められます。
この条文から言えないこと。あらゆる解除にこの規定がそのまま当てはまる、とは書かれていません。適用の前提は「その者の都合による」解除であることです。就業先で起きたトラブルを理由に挙げられた解除に当然に適用されると読めるものではありません。だからこそ、先に確認すべきなのは、解除の理由が何と説明されているのかと、派遣契約・就業条件明示書に中途解除時の取り決めがどう書かれているのかです。
派遣期間の途中で解除された場合の考え方は、厚生労働省も説明を出しています。労働者派遣契約が派遣期間の途中で解除されました(厚生労働省)を、自分の状況と照らして読んでみてください。
雇用主である派遣元の側については、厚生労働省の派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針があります。ここで新たな就業機会の確保や休業等が挙げられているのは、派遣労働者の責に帰すべき事由によらない労働者派遣契約の中途解除が行われた場合という条件のもとです。この条件に当たる場合には、派遣元事業主が派遣先と連携して新たな就業機会の確保を図ること、それができないときはまず休業等を行い、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすことが示されています。
これとは別に、同じ指針では、派遣労働者からの苦情の適切な処理も派遣元事業主の講ずべき措置として示されています。苦情処理は中途解除の有無にかかわらない一般的な項目で、上の就業機会の確保や休業等とは条件が違います。いずれにしても指針は講ずべき措置を示したもので、誰に何がいくら支払われるかが個別事情の確認なしに決まるという意味ではありません。
休業手当は自動的には決まらない
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
労働基準法 第26条(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。休業手当を支払う義務を負うのは「使用者」、つまり派遣で言えば雇用主である派遣元です。派遣先ではありません。
この条文から言えないこと。派遣契約が解除されたら自動的に平均賃金の6割が出る、とは書かれていません。条件は「使用者の責に帰すべき事由による休業」であることで、それに当たるかどうかは派遣元について個別に判断されます。だから、金額を期待する前に、派遣元へ「今の扱いは休業なのか」「休業手当の対象になるのか」「ならない場合はどういう理由か」を確認するのが具体的な一歩になります。
このケースで確認するもの
- 就業条件明示書の派遣期間と、中途解除の場合の措置に関する記載。
- 派遣元との雇用契約書の契約期間。派遣契約の期間と雇用契約の期間は一致しないことがあります。
- 解除の理由が、誰から何と説明されているか。
- 派遣元の営業担当への確認事項。雇用契約はいつまで残るのか。次の就業先の紹介の見込みはあるのか。紹介がない期間はどういう扱いになるのか。
派遣契約が解除されても派遣元との雇用契約が残る場合、次の就業先の話になることがあります。ただし、次が必ず紹介されるとは限りません。紹介の可能性は、雇用契約の内容や派遣元の状況によります。だから「探してもらえるはず」と待つのではなく、上の4点を先に聞きます。連絡すべき相手は、派遣先の担当者ではなく派遣元です。
ケース2:派遣元から期間の途中で解雇される
こちらは雇用契約そのものを終わらせる話です。ここでは、解雇そのものが有効かどうか(実体の問題)と、予告の手続きが守られたかどうか(手続の問題)を分けて見ます。まず実体の側から確認します。有期の雇用契約では、期間の途中の解雇に高いハードルが置かれています。
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
労働契約法 第17条第1項(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。有期契約の期間中は、「やむを得ない事由」がなければ解雇できません。期間を決めて契約した以上、その期間は雇うという約束が前提になっているためです。
この条文から言えないこと。何が「やむを得ない事由」に当たるかは、条文には書かれていません。個別の事情によって判断される部分なので、自分のケースが該当するかどうかを、この記事で断定することはできません。
期間の定めのない契約などについては、解雇権の濫用に関する条文があります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働契約法 第16条(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性。この2つを欠く解雇は権利の濫用として無効になります。
この条文から言えないこと。どこまでが「合理的な理由」で、どこからが濫用かは、条文の文言だけでは決まりません。判断のしかたを含めた労働契約のルール全体は、厚生労働省の労働契約に関するルール等にまとまっています。
予告のルールと、その適用除外
ここからは手続の話になります。労働契約法16条・17条が解雇の有効性そのものを対象にしているのに対し、労働基準法20条・21条が定めているのは、解雇に当たっての予告と解雇予告手当という手続です。条文の役割が違うので、予告の手続きに不備があれば解雇が一律に無効になる、という書き方にはなっていません。解雇が有効かどうかと、手続き上どういう効果が生じるかは、別々に判断されます。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
労働基準法 第20条第1項(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。解雇するなら原則として30日前の予告が必要で、予告をしない場合は不足する日数分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことになります。
この条文から言えないこと。まず、同条には但し書きがあり、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合と、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、この限りでないとされています。そして、この但し書きに当たるかどうかは会社が自分で決められるものではなく、行政官庁の認定を受ける手続きが定められています(同条第3項)。
もう一つ、20条には適用除外があります。
- 日日雇い入れられる者
- 2箇月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
- 試の使用期間中の者
労働基準法21条は、これらの労働者について20条を適用しないとしたうえで、但し書きを置いています。日日雇い入れられる者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合、2箇月以内の期間を定めて使用される者および季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合、試の使用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この限りでない、つまり20条が適用されます(e-Gov法令検索・労働基準法)。短い期間の契約で働いている場合ほど、自分がどれに当たるのか、いつから引き続き使用されているのかを、契約書で確認する意味があります。
このケースで確認するもの
- 雇用契約書の契約期間。期間の定めがあるのか、無期なのか。
- 解雇と告げられた日付、誰から、いつ付けで終了と言われたか。
- 解雇の理由。請求できる証明書は、タイミングによって条文が変わります。解雇の予告がされた日から退職の日までの間に解雇の理由についての証明書を請求した場合は労働基準法22条2項、退職した後に退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)などについての証明書を請求する場合は同条1項で、いずれも使用者は遅滞なく交付しなければならないとされています(e-Gov法令検索)。
- 予告手当の有無と金額の説明。
自己判断で結論を出さず、事実と書面を揃えたうえで相談してください。持ち込み先は内容で分かれます。解雇予告手当が支払われない、賃金が支払われないといった問題は、労働基準監督署です。解雇そのものが有効かどうか、雇止めや労働者派遣契約をめぐる争いは、労働局の総合労働相談コーナーか弁護士になります。総合労働相談コーナーと労働基準監督署への相談は無料です。
ケース3:有期の雇用契約が満了し、更新されない
3つ目は、期間が満了して更新されないケースです。これは期間途中の解雇とは別の手続きで、根拠になる条文も違います。
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
労働契約法 第19条(柱書、e-Gov法令検索)
各号は、要約すると次の2つです。
- 第1号:過去に反復して更新されたことがあり、更新しないことで契約を終了させることが、無期契約の労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められる場合。
- 第2号:契約期間の満了時に更新されるものと期待することについて、合理的な理由があると認められる場合。
この条文から言えること。更新しないという扱いが、常に自由に認められるわけではありません。第1号か第2号に当たり、かつ拒絶が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、従前と同じ労働条件で申込みを承諾したものとみなされます。
この条文から言えないこと。ここは省略できない部分です。まず、第1号または第2号に該当することが前提で、何回か更新していれば当然に該当する、という書き方ではありません。そして、労働者側が申込みをしていることが要件になっています。契約期間が満了する日までに更新の申込みをするか、満了後遅滞なく締結の申込みをするか。黙っていれば自動的に更新される、という条文ではありません。さらに、該当したとしても拒絶の合理性・相当性が個別に判断されます。
有期労働契約に関するルールは、厚生労働省の労働契約に関するルール等にまとめられています。更新の話が出ている段階で、一度目を通しておく価値があります。
このケースで確認するもの
- 雇用契約書の契約期間と満了日。
- 更新条項。更新の有無、更新の判断基準がどう書かれているか。
- これまでの更新回数と、通算の勤務期間。
- 更新の意思確認が、通常いつ頃行われるのか。
- 更新しないと告げられた場合は、いつ、誰から、どういう理由で告げられたかの記録。
更新されるかどうかを、仕事の振られ方や席の配置といった「前兆」から読み取ろうとしても、それは推測にとどまります。契約書に書かれた満了日と更新条項、そして派遣元への確認の方が、はるかに確実な材料になります。
ミスの損害を弁償させられるのか
まず、条文がはっきり禁じていることがあります。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
労働基準法 第16条(e-Gov法令検索)
この条文から言えること。「ミス1件につき○円を支払う」「途中で辞めたら違約金○円」といった取り決めを、あらかじめ契約に入れることはできません。雇用契約書や誓約書にそういう条項があるなら、その部分はこの条文に反します。
この条文から言えないこと。この条文が禁じているのは、あらかじめ金額を決めておくことです。実際に発生した損害について請求すること自体を、この条文が全面的に禁止しているわけではありません。ここを混同した説明を見かけますが、条文の射程は違います。
ただし、請求できる場合でも、実際に生じた損害の全額が当然に労働者の負担になるわけではありません。厚生労働省は、労働者の仕事上のミスによる損害について、損害の公平な分担という考え方から、信義則上相当と認められる限度に請求が制限されるという考え方を示しています(厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。どこまで認められるかは条文だけでは決まらず、個別の事情によって判断される領域です。
そして、給与から差し引くという話は、賠償が認められるかどうかとは、さらに別の問題です。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
労働基準法 第24条第1項(本文抜粋、e-Gov法令検索)
この条文から言えること。賃金は全額を支払うのが原則です。厚生労働省も、使用者が労働者に対して損害賠償請求権を持っている場合であっても、それを賃金と一方的に相殺することは原則として許されないと説明しています(厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。会社側に言い分があるからといって、そのぶんを給料から差し引いてよいという構造にはなっていません。
この条文から言えないこと。控除がいかなる場合も一切できない、という条文ではありません。同項には但し書きがあり、法令に別段の定めがある場合(所得税や社会保険料など)や、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ないときは労働者の過半数を代表する者)との書面による協定がある場合には、賃金の一部を控除して支払うことができるとされています。
ここで、通常の控除と、損害賠償分の相殺は分けて考える必要があります。上の但し書きが想定しているのは、社宅費や社内預金のように、あらかじめ範囲を定めた控除です。賃金控除に関する一般的な労使協定があることをもって、それだけで損害賠償分を給料から差し引いてよいことになるわけではありません。また、労働者本人が相殺に同意する形をとる場合でも、厚生労働省の説明では、その同意が労働者の自由な意思に基づくものと認めるに足りる客観的な理由があることが必要とされています。「同意書にサインした」という事実だけで当然に有効になるものではありません。
だから確認すべきなのは、差し引かれているものが通常の控除なのか損害賠償分の相殺なのか、根拠は何なのか、労使協定があるのか、給与明細にどう記載されているのか、です。
請求書が届いた、給与から差し引くと言われた、という段階になったら、そこで自分だけで判断しないでください。契約書、誓約書、言われた内容の記録、給与明細を揃えたうえで、賃金が支払われない、勝手に差し引かれたという部分は労働基準監督署へ。賠償請求そのものに争いがある場合は、労働局の総合労働相談コーナーか弁護士へ相談します。
ミスが起きた後に残しておくもの
ここは、その日の心境ではなく、手続きとして何を残すかの話です。やることは、事実を出す、記録を残す、言われたことを残す、派遣元に共有する、の4つです。
- 事実を出す。自分が担当した範囲と作業した時間帯を、分かる形で先に伝える。調べる側にとっては、原因の切り分けが早く終わることが助けになります。
- 記録を残す。自分の作業内容と時刻を、その日のうちに書き出す。翌日には細部が曖昧になります。
- 言われたことを残す。日付、相手、内容。特に契約や今後の就業に関わる話が出た時は残しておく。後から確認できるのは、この「誰から、何を、いつ告げられたか」です。
- 派遣元に共有する。派遣先とのやり取りで処遇の話が出たら、同じ内容を派遣元の営業担当にも伝える。雇用契約の相手は派遣元なので、判断や手続きに関わるのは派遣元です。
ただし、記録の取り方には境界線があります。就業先と派遣元の社内ルール、秘密保持義務、個人情報の取扱いルールが先に来ます。この範囲を超えない形で残してください。
- 残すのは、日付、誰が言ったか、秘密に当たらない範囲の要旨にとどめる。
- 書く場所は、私的なメモを持つことが認められている場所にする。
- 顧客名、案件名、システム名、個人が特定できる情報は書かない。
- メールやチャットの画面、社内資料は、許可なく複写したり持ち出したりしない。
記録は、争うための準備という意味だけではありません。自分が担当した範囲を正確に言えるようになると、責任の切り分けの話がしやすくなります。
相談先に持っていくもの
- 雇用契約書(契約期間、更新条項、更新回数が分かるもの)
- 就業条件明示書(派遣期間、中途解除時の措置の記載)
- 給与明細
- 誰から、何を、いつ告げられたかの記録(秘密保持義務や社内ルールの範囲内で残したもの)
- 自分宛てに交付された通知書など、手元にある書面
- 賠償や控除の話が出ている場合は、請求書や誓約書などの書面
持ち込み先は内容で分かれます。賃金が支払われない、解雇予告手当が支払われない、賃金から勝手に差し引かれたという問題は、労働基準監督署です。解雇や雇止めが有効かどうか、労働者派遣契約の解除をめぐる争いは、労働局の総合労働相談コーナー、または弁護士です。どちらに当たるか自分で切り分けられない場合は、まず総合労働相談コーナーで内容を説明してください。書面が揃っているほど、話が具体的なところから始まります。
私が収入源を分けておこうと思った理由
ここからは、法律ではなく私の側の話です。一般論ではなく、私の場合はこう考えた、という範囲で書きます。
私は個人でサイトを運営してきて、売上が約9割落ちる経験をしています。この記事を書いている時点で、サイト側は生活を支える規模ではありません。そのうえで私は、収入源を分けることを、契約終了時の備えとして検討しています。
条文を一通り読んで私が納得したのは、契約が切られるかどうかを自分の側で完全にコントロールすることはできない、ということでした。そこで私は、切られた時に即座に詰まない形をつくろうとしています。
派遣で働きながら固定収入とサイト運営をどう並べるかは、ブロガーが派遣社員に戻るのはあり?で整理しています。収入が落ちた後の全体像はブログで稼げない時の次の打ち手にまとめました。
今まさに支払いが厳しい場合は、個人事業主の資金繰り相談窓口リストで相談先の順番を確認してください。体調まで崩している場合は、退職と傷病手当の相談で迷走した話の方が近いと思います。
よくある質問
派遣先に「明日から来なくていい」と言われたら、それで終わりですか。
通常の適法な派遣では、雇用契約の相手は派遣元です(派遣法2条1号)。派遣先の担当者の発言だけで雇用契約が終わるという構造にはなっていません。まず派遣元に連絡して、労働者派遣契約がどうなっているのか、解除の理由は何と説明されているのか、私と派遣元の雇用契約はいつまでなのか、その間の扱いはどうなるのかを確認してください。派遣先の都合による解除であれば、派遣先には就業機会の確保などの措置を講じることが求められます(派遣法29条の2)。ただし、当てはまるかどうかは解除の理由によります。
ミスが多いことを理由に解雇されることはありますか。
有期契約の期間途中であれば「やむを得ない事由」が必要です(労契法17条)。期間の定めのない契約などでは、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇は権利の濫用として無効になります(労契法16条)。これらは解雇が有効かどうかという実体の判断で、予告や解雇予告手当という手続の問題(労基法20条・21条)とは別に評価されます。いずれも個別の事情によって判断される領域なので、あなたのケースがどう評価されるかを、この記事で断定することはできません。実際に解雇を告げられた場合は、解雇の理由についての証明書を請求してください。予告された日から退職の日までの間なら労基法22条2項、退職した後なら同条1項です。そのうえで、解雇が有効かどうかという相談は労働局の総合労働相談コーナーか弁護士へ、解雇予告手当が支払われないという相談は労働基準監督署へ持ち込みます。
損害を給料から引くと言われました。
賃金は全額を支払うのが原則で、控除には法令の定めや労使協定といった根拠が必要です(労基法24条1項)。厚生労働省は、使用者に損害賠償請求権があっても、それを賃金と一方的に相殺することは原則として許されないと説明しています(厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。賃金控除に関する一般的な労使協定があることだけを根拠に、損害賠償分を差し引くことはできません。本人が同意する形をとる場合も、その同意が自由な意思に基づくと認めるに足りる客観的な理由が必要とされています。また、ミスの賠償額をあらかじめ契約で決めておくことは禁止されています(労基法16条)。実際に生じた損害の請求そのものを労基法16条が全面的に禁じているわけではありませんが、その場合も損害の公平な分担の観点から、信義則上相当と認められる限度に制限されるという考え方が示されています。雇用契約書、誓約書、給与明細、言われた内容の記録を揃えて、賃金から差し引かれた部分は労働基準監督署へ、請求自体に争いがある場合は労働局の総合労働相談コーナーか弁護士へ相談してください。
仕事が覚えられないことを理由に契約を切られますか。
有期契約であれば、期間満了で更新されないという形はあり得ます。ただし、それは期間途中の解雇とも、派遣契約の解除とも別の手続きです。反復更新の実態や更新への合理的な期待がある場合には、労契法19条の枠組みで判断されることがありますが、その場合も労働者側からの申込みが要件になります。習得の速度だけを自分の欠陥として受け取る前に、契約期間、更新条項、これまでの更新回数を事実として確認してください。判断材料が変わります。
派遣元に相談すると、印象が悪くなりませんか。
派遣元は雇用主です。厚生労働省の派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針では、派遣労働者からの苦情の適切な処理が、派遣元事業主の講ずべき措置として示されています。これは中途解除があったかどうかに関わらない一般的な項目です。これとは条件が違うものとして、派遣労働者の責に帰すべき事由によらない労働者派遣契約の中途解除が行われた場合に、新たな就業機会の確保を図り、それができないときはまず休業等を行って労働基準法等に基づく責任を果たすことが示されています。雇用契約や今後の就業の扱いを決めるのは派遣元なので、確認や相談の相手も派遣元になります。
まとめ
条文を読むと、手続きは3つに分かれています。派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除されること。派遣元との雇用契約を期間の途中で解雇されること。有期契約が満了して更新されないこと。決める相手も、根拠になる条文も、確認すべき書類も違います。自分に起きているのがどれなのかを先に特定すると、次に何を聞けばいいかが決まります。
労働基準法16条により、使用者は、労働契約の不履行について、労働者との間で違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることはできません。賃金は全額払いが原則で、使用者に損害賠償請求権があっても、賃金との一方的な相殺は原則として認められません。一方で、休業手当も、就業機会の確保も、更新も、自動的に手に入るものではありません。どれも、事情の確認と自分からの確認が要ります。
そのうえで、私が手をつけられる範囲にあるのは、収入の本数の方です。ミスをなくすことはできませんし、切られない保証も作れません。私が今つくろうとしているのは、切られた時に即座に詰まない形の方です。
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